硬膜外ブロック(こうまくがいぶろっく)とは
脳から背骨の中を縦に通っている神経の束を脊髄(せきずい)神経、この脊髄を包んでいる膜を「硬膜」といいます。その硬膜の外側にある「硬膜外腔」に局所麻酔薬を注入して、痛み感覚を脳に伝達する神経の働きをブロックすることで、脊髄、交感神経の興奮を抑える治療法です。
硬膜外ブロックは以下のような痛みに対して行います。
頚椎の中にある脊髄神経から起こる痛み
頚椎椎間板ヘルニア、頚椎症性神経根症、変形性頸椎症など
首、肩、腕、手、指などに生じる痛み、しびれなどがみられるもの
腰椎の中にある脊髄神経から起こる痛み
腰部脊柱管狭窄症、腰椎椎間板ヘルニア、変形性頸椎症、腰椎すべり症など
腰部、でん部、太もも、ふくらはぎ、すね、足、足先などに生じる痛み、しびれが
みられるもの
腰椎捻挫(一般的にぎっくり腰と称される急な腰痛)で行う場合もあります。
硬膜外ブロックの効果・効果時間
硬膜外ブロックは、数時間~1週間の効果があります。
実際のところ、硬膜外ブロックの効き目、効果期間は個人差、身体の状態、病気の程度にも大きく左右されます。
硬膜外ブロックを複数回おこなっても、持続時間が数時間である場合は内服など他の治療法を考慮します。
こじまクリニックで多様な治療法は以下をご覧ください。
硬膜外ブロックの効果
硬膜外ブロックは、痛みの感覚を脳に伝える神経の興奮を抑えます。それに加え、交感神経の興奮を抑え、血流が改善されて発痛物質が代謝されやすくなりますので、痛みの悪循環を断ち切ることが期待できます。また、運動神経にも麻酔効果は影響するため、過度に緊張した筋肉の興奮を抑え、筋肉由来の痛みの改善にも効果を期待できます。
硬膜外ブロックの所要時間
硬膜外ブロックの手技自体は、短時間で終了します。後ほど説明いたしますが、合併症(血圧低下、手足の脱力感など)が出ていないかをチェックするために、硬膜外ブロックの注射後は1~2時間ほどはベッドで安静にしていただきます。
硬膜外ブロックの合併症・危険性
硬膜外ブロックは、医療行為です。当然、合併症が起こるリスクが少なからずあります。軽度なものから重篤なものまで様々な合併症、危険性があります。医療者、患者様両サイド知っておくべきことですので、専門医として解説いたします。
また、こじまクリニックでは重篤な合併症に遭遇したことはございませんが、万が一の場合に、すぐ対応できるように、注射後は安静にして経過を確認しております。
刺した部分が痛む。
ブロック針を刺した後の箇所が痛むことがあります。
時間の経過と共に改善します。
低血圧
硬膜外ブロック後、一時的に低血圧を起こすことがあります。血圧をコントロールする自律神経にも麻酔がかかり、血管が拡張されることで血圧が低下してしまいます。そのため、硬膜外ブロックの前後には血圧を測定します。硬膜外ブロックの注射後に血圧が低下した場合は、自然回復まで1時間~2時間ほど安静にして休んでいただきます。
一時的な手足の脱力
運動神経にも麻酔がかかるため、関係する筋肉に力がいれ辛くなり、手足が脱力することがあります。こちらも血圧低下と同様で一時的なものです。手足の脱力が見られる場合は、1~2時間ほど横になって休んでいただきます。
排便、排尿困難
硬膜外ブロック後、尿・便が出にくくなったり、感覚がわからなくなることがあります。
数時間から半日程度で改善します。
局所麻酔薬による中毒
硬膜外ブロックの注射後、以下のような症状がみられれば局所麻酔薬による中毒
を疑います。
☑めまい、頭がくらくらする
☑耳鳴り
☑目がくらむ、目がかすむ
☑手足が痙攣する
☑気絶する
上記の症状を起こすことがあります。
このような症状が見られる場合は、酸素吸入、点滴などにより局所麻酔薬の分解や排泄を促します。局所麻酔薬が体内で分解されることで自然回復します。
硬膜穿刺
ブロック針が硬膜外腔より奥に進み、薬液が一部髄液内に混入します。
全身の力が抜けたり、気分が悪くなったりします。
局所麻酔薬混入が少量であれば時間の経過と共に改善します。
細菌感染
細菌感染は発生頻度が0.06~0.4%と稀ですが、注射の針を刺した部分から細菌が入ってしまい、化膿することが稀にあります。背中が急に痛くなる、発熱、手足のしびれ、麻痺などがみられたらすぐに当院までご連絡ください。
硬膜外出血
発生頻度は0.01~0.05%で、細菌感染よりもさらに稀ですが、硬膜外出血が起こることがあります。針を刺した後に硬膜外腔にある血管から出血している状態です。急に背中が痛くなる、手足がしびれる、麻痺などを起こします。
まとめ
局所麻酔により神経に作用し、筋肉の緊張の緩和、血管収縮緩和による血流改善が期待できます。効果時間は個人差や症状の重さ、病状で大きく作用されるため、効果時間は1時間~数週間ほどあります。
硬膜外ブロックは、血圧低下、脱力感などの合併症がみられ、稀に細菌感染や硬膜外出血がみられるリスクがあります。
硬膜外ブロックは痛みの治療に効果的ですが、手術の代わりにはなりません。根本的な解決に手術が勧められるものもあります。そのような場合は、当院から紹介状をお書きしますので、ご安心ください。
こじまクリニックでは、しっかりとカウンセリングをおこなってから治療方針を決めています。痛みでお悩みの方は、お気軽にご相談ください。
コラム監修医師
こじまクリニック 院長小島 研太郎
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